花形装飾活字を愛でる その8

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紹介しておりますエンスヘデ活字シリーズ60の花形装飾活字のデータ差し上げます。
詳しくは
http://www.fengfeeldesign.org/をご覧ください。
お待ちしております。

2242と2243。
対照的な2つのパターン。
役割としては一番始めの2235と2236と同じような感じ。
ただこれは繋ぐことが出来ないので単体で使わなければならない。
けれど単体で使うと装飾の弱さからその役割は果たせなくなる。
これは実は他の装飾と組み合わせて使うのが一番の方法みたいです。
大きい模様に対して終わりを付ける、収拾するような感じで使うとうまくいく。
もし単体で使うのなら例のように一回ずつ完結させておいて使うと、
まだ使えるのかなという感じ。
四隅に置いても物足りないし、
逆にその物足りなさのおかげで他の装飾が気兼ねなく置けるので、
そういう意味では「連結」や「コバンザメ」のようなどうしようもなく金魚の糞みたいなやつです。
とむちゃくちゃ書いてますが、
組んでるといろいろ重宝出来るイカしたやつで、
知らんまに気付いたら使ってる、くっついてます。

と、
こういう感じですが、
これの回になったら書こうと思ってた事があって、
それは今回、アウトライン化においてのオペレートするにあたって、
その設計思想の中心を何にしたのかが、よくわかる図案です。
パソコンで見てる方はわかりますが、
一枚目の画像で本来は直線であるべきところが、
斜めの線になっている部分があると思います。
ほんまはこれは正しくないんですね。
今までも紹介してきた中で円であるはずの箇所が変に湾曲していたりしていたと思います。
これは今回の設計思想の中心に何を置くかで判断した結果です。
今まで現代において復刻されてきた花形装飾活字は、
身近なものでいうと高価な事典とかちょっと中性かぶれしたアート本とか、デザインの参考書だとか、数少ない装飾専用のフォントであったりとか、
そういうのって設計思想というものがあって、
デザイナーさん達がそれをキチン決めてアウトライン化していく訳です。
で、今回のアウトライン化するにあたっての独自性を考えた時に、
どうせなら今までに無い発想で(多分)で設計思想を組み込んでアウトライン化できればと考えたんですよね。
ある程度作りこまれたやつを見てきた中で、
共通して言える事がありました。
「何かが足りない」
そのどれもが正しくキレイにキチンと考えられて丁寧にオペレートされているのにも関わらず、何かが足りないと感じていたのです。
今回のこの作業はその部分が何かというのを調べる旅でもありました。
それが8ヶ月もの時間を費やした要因でもあると言えます。
花形装飾活字は文字の通り活字であり活版という技術を通して紙に印刷されていたものです。
1つ1つ同じパターンの装飾を職人が彫りそれらを活字として1つ1つ組み、
それからやっと紙に刷るという事をします。
老舗の活版印刷屋さんとか意識の高い印刷屋さんはキチンと残している事でしょう。
それがコンピューターを介す事で彫る必要が無くなる訳です。
画面には既に出来上がりとしての紙面があり、
後はデータを流せば印刷完了という具合です。
もちろんそのおかげで設計としては正しくは出来ますが、
同時にそれは版を彫った職人を冒涜する事になると考えたのです。
もちろん現存している見本帳は印面が潰れていたり正しくない箇所があったり、
明らかに版の失敗の面があります。
そこで凄い面白い発見があります。
明らかに真っ直ぐに彫る事が出来る部分をわざとかのごとく斜めにしていたり、
曲線でも単に平行に作らず微妙にずらしていたり、
装飾1つにしても意図的に形を変えている不思議な箇所があったのです。
これは見過ごしてはいけないと思いました。
これこそが「何かが足りない」部分であったと確信をしたのです。
ただしそれはミスか意図かを見分けるシンドイ作業やったんは言うまでもありません。
作っては消し作っては消しの繰り返しでした…。
あ、まあ武勇伝はよろしおます。
これはつまりのとどが、
設計思想の中心を線にするかオブジェクトにするかの分かれ道だったのです。
きっと多くのデザイナーはこの分かれ道立ったと思います。
世に出ている多くは線という選択肢を選んでいます。
ある人はこうも書いています。
復刻ではダメだ。それはつまり銀の版を彫るという作業に戻るという事だから。
ボクもそれは同意でした。
それなら版で言い訳です。
アウトライン化する意味もないのだと思います。
ただ、コンピュータを介す事で版を通り越して即印刷という発想に抵抗がありました。
コンピューター上で完成させるのではなくて、
印刷を主体に置いた上で完成させる発想。
だからオペレートする花形装飾も「版」でないといけないのです。
復刻はいけない、似せるだけではどうにも情けない出来になるのは目に見えている。
だからこそ、コンピュータで彫るという作業をもう一度する事で、
職人の意識を取り込み生きた花形装飾活字をそこに作り出す事が、
今回の大きな目的であり目標であると考えました。
正しい設計を否定するものではないけれど、
これも花形装飾活字をアウトラインする1つの視点であると、
設計思想の1つであると提示した訳です。
べんべん。
こういう事なのでした。