花形装飾活字を愛でる その120

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理想は一定のルールの元でランダム性を作り出す事です。
不確定要素をいかに作り出すか。
西洋の花形装飾活字とは逆の発想です。
ルールを作れば作るほどランダム値は大きくなり、
ランダムに配すれば配するほど、
それがルールになるような在り方を今回は採用しました。

日本の美意識というものは、
目に見えない感覚のようなものが多い。
味覚にしても嗅覚にしても、
余韻のようなものを全面に押し出しているように思いますし、
作り出すというよりかは、
選び取っているという意識が強いようです。
西洋の場合は、
人が作りしものと自然が作りしものを別に見ているけれど、
日本の場合は、
自然は自然として、
人は人として、
別に見ているのだけど、
キーワードとしては、
利用や再現、もしくは融合、調和といった具合で、
人が自然に対する感じた事を構築し選び取っているように思います。
石も加工するのではなくって、
どこからか拾ってきてそのまま置くような動作、
その置き方を、
石を操作するのではなくって、
石本来が持つ自然性と人の存在を掛け算のような重視で配置する、
その偶然性が「作り出す」事象を美意識にしているのだと考えています。
それは西洋が組み立てて整理する文化にあるのとは逆で、
組み立てない事で、
自然発生したルールを掬い取った作法を利用し、
それらを組み合わせる事で、
あのような庭が完成しているのではないでしょうか。
という事は、
日本における建物と庭の石が織り成す関係というのは、
単なる飾りや視覚的な部分での話しではなく、
建物と自然の区別を人が常に感じる事の出来る、
自然的なランダムを作り出すルールのようなものであり、
これこそが今回の目指すべく理想である訳です。

これを、
新・花形装飾活字『水草』に照らしあわした場合に、
装飾a(美意識としての)、装飾b(整理性としての)、活字、人の4つにまず分ける事が出来ます。
まず今回は約310個の図案を用意しました。
前回までに図案1つずつで言うと勘違いしてはいけない部分として書きましたが、
これはとくに石をモチーフにした訳ではなく、
また『水草』をモチーフにした訳ではありません。
芽生え、苔むすのような日本人特有の美意識をグラフィックデザインとして定着させたものです。
その上で、
これらを川辺に転がっている石ころに見立て、
製品版では整理する事なく円形に配しています。
これは上記の、
要素をルールとして組み上げていくのではなく、
気に入った形を拾い上げていき、
それらを活字と人(搾取するという意味の人)との関係と、
実際の美意識との掛け合わせで配置していけるようするというものを、
再現したものです。
狙いとしては使っていく内にレゴのように、
自分の気に入った形、または作法のようなものが生まれてくるでしょうから、
それを独自に整理しファイル化してもらう事なのですが、これは後々書いていきます。
つまり、
今まで視覚的に日本の庭としてきたものを感覚化(もしくは意図)し、
感覚としての美意識で感じていたものを視覚化したものが、
今回の花形装飾活字『水草』という具合なのです。
その結果、
活字との関係において、
今までとは根本的に違うタイポグラフィが生まれる事になりました。
少し大げさかもしれませんが、
活字そのものを装飾化する事によって、
より今までのタイポグラフィよりも活字そのものの力が増しているように思います。

そして、
日本の庭との関係において、
もっとも気を配ったのは、
装飾と活字の関係を限定的にならないようにした事です。
それは、装飾が必ずしも石(要素としての)である必要がなく、
活字も人(存在としての)である必要がないというものだからです。
これは、あくまで関連性の問題であり、
言葉でくくれるものではありません。
ただ、日本語書体において重要な事が飾る事ではなく、
緩和剤的な存在としての装飾性と、
組まれたときの、
庭と石との関係が「丁度良い」という事を、
人(この場合は活字ですね)が入った時にどうなるのか、
という観点において、
これはグラフィックデザインとしての技法能力が問われますので、
使う人に委ねるしかないと考えております。
また、
「作法」についても、
日本の庭というくくりで言うと、
まったくの違う分野ですし、
汲み取る事は可能ではありますが、
今回、作り上げた図案は、
それを限定するような作りをしていません。
つまり作り上げていくのではなく、
作り合わせていく方法なので、
「作法」そのものも使う人によって、
シーンや媒体によって変わるという事です。

とくに具体的な物質をモチーフにしていませんから、
まず情報がいかなるモノかという事が、
前提になっています。

う、またもや伝わったかな…。
今までの装飾的な在り方とは違う上に、
それがタイポグラフィに与える影響というのは、
実際に使ってみて凄く大きく、
明らかに現存している方法でのやり方とは異なるドキドキ感があるというか、
単なる和風ではなくって、
日本がもしタイポグラフィグラフィックデザインを最初に開発していたら、
みたいな感じになっています(おおげさか)。
これについては説明書的な感じで、
いまのこの基本説明が終わったら実践とともに書いていけたらと思いますが、
このやり方って、
別に『水草』じゃなくてもいける(アカンがな…)という事に気付いたんです。
でも今のとこ『水草』が一番いい答えのような気がしますし。
他でボクの知ってる範囲では見た事がないのでどうなのでしょう。

とりあえず、
水草の図案や組むという発想の基点についての概要は、
今回で大体書けたので、
次からは結局何を作り上げたのかという事も含めて、
概要編、後半戦に突入です。
質問やわからない事がありましたら、
メール(printers_flowers@fengfeeldesign.org)か、
ツイッター(http://twitter.com/fengfeeldesign)までお寄せください。
次回へ続く。