花形装飾活字を愛でる その166

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重力の方向について。この花形装飾活字『fuji』には重力の方向が定められています。重力の方向を一定にする事で自然なアプローチでセッティングする事が可能です。1つの連なる要素を見つける事が出来れば、後は繋がる方向に配置するだけです。この装飾には「葉」と「花」の2つがあり、それらをバランスよく繋げたり離したりする事でアクセントが付き、より心地の良い配置になります。もし「自然」に配する事を希望するなら、例の画像のように少し斜めを意識すれば「自然」な感じ、いわゆる日本の友禅の雛形に見られるような配置に近くなります。この「fuji」には水草と同じ「外」と「内」のルールがあり、今回の「fuji」の肝でもあるんですが、「外」と「内」を一定の制限で誰もが気軽に使えるように仕組んでいます。それがつまり重力の方向を意識するという事になります。コツは「違和感」が無いように繋げるだけ、それだけです。後は対象に合わせて変化を与えるだけ。簡単です。そもそも、この繫がりの発想の着眼点は平仮名の「連綿」から来ています。なので一度、縦に真っ直ぐ繫がりに気を配りつつ並べてみると確認出来るかと思いますが、まさしく平仮名のあの連綿そのもの(遠いけれど…)です。それが「水草」であり、「fuji」への継承でもありました。結局、日本の装飾や画というのは平仮名的なんですよね。極論なのかもですが、なんというか、動いている「動」の存在を記憶媒体のように移行させるのが日本的な美であるんじゃないかというのが、ボクの考えで、つまり不変的なものを絵として描くのではなく、まるでそれが動画のような動きそのものであるんじゃないかな。というよりも「fuji」そのものが、もしも、西洋人がこの発想に気付いていたらという元で生まれたというのもあるし、組むという発想そのものを日本的な要素を強める事で変化させ、いわゆるエンスヘデのもののような「流れ」や「空間」そのものを圧縮させて不変化させつつ配置する完結型の配置方法ではなく、「重力」という紙面では絶対に完結が起こりえない発想での配置。そして対象の文字が醸し出す情緒の内包。もっと言うと、西洋の花形装飾活字が、文字の情報そのものを限定付けて整理するいわゆる「箱型」であるとしたら、今回の場合というのは「受け止め型」という事になる訳です。「魅せる」「飾る」の整理ではなく、紙面に現れない文章の美しさ、「萌え」や、それこそ「情緒」のようなものの整理を目的とした装飾。それが花形装飾活字「fuji」であり、重力で組むという発想でもあります。